7.妊娠中に貯蔵鉄の評価としてフェリチン検査をすべきか?

ポイント

  • 妊娠中の貧血の大部分は鉄欠乏性貧血である.
  • 妊娠悪阻や生理的血液希釈の影響でヘモグロビン値だけでは鉄欠乏の把握が難しい場合がある.
  • 鉄欠乏の状況を把握して,必要な鉄補充を行い分娩時の出血に備え,産褥の早期回復に努める.

(1)妊産婦貧血の考え方

    国際的な基準では,妊娠初期と末期はヘモグロビン11.0g/dL,中期は10.5g/dLを妊婦の貧血と定義している.そうした場合,妊娠全体を通じて30%以上の妊産婦で貧血を生じるとされる.妊娠期の循環血液量増加および胎児・胎盤発育,分娩時の出血などの要因により妊娠分娩全体を通して約1,000㎎の鉄需要があるため,妊産婦に認められる貧血の多くは鉄欠乏に起因する.しかし,妊娠初期の悪阻による脱水や,妊娠中期以降に血球に対して血漿量の増加がより多くなる生理的血液希釈が生じることなどの要因で,ヘモグロビン濃度だけでは正確な鉄需要・供給バランスを把握することが難しい.そのため,鉄欠乏状態を把握するパラメーターとして血清フェリチン値がよい指標と考えられている.ただし,感染,悪性腫瘍,肝障害の影響で高値を示す場合もあることに留意が必要である.

(2)妊婦における適切なフェリチン値とは

    妊娠中のフェリチン値の適正値についてはいまだコンセンサスがない.妊娠初期に15ng/mL1,2)を鉄欠乏の指標とする推奨もあるが,妊娠初期の妊婦を対象とした後方視的研究では,鉄欠乏による貧血を防止するための血清フェリチンの閾値として,妊娠初期25ng/mL,中期と末期20ng/mLが提案されている3).妊娠初期にフェリチン低下(<25ng/mL)が確認された場合には,妊娠後半期の母体血液増加・児発育による鉄需要に備えて内服鉄剤,あるいはサプリメントによる補充を行う.そして,妊娠末期にはフェリチン値15ng/mLを目安として鉄欠乏と判断し鉄補充を行う.その場合に内服鉄剤が第一選択であるが,分娩時期が近く早期回復が必要な場合は高用量静注鉄剤の使用も検討する.

文献

  • 1)World Health Organization. WHO guideline on use of ferritin concentrations to assess iron status in individuals and populations. World Health Organization. 2020
  • 2)Centers for Disease Control and Prevention. Recommendations to prevent and control iron deficiency in the United States. MMWR Recomm Rep. 47(RR-3): 1-29, 1998
  • 3)Mei Z, et al. Physiologically based trimester-specific serum ferritin thresholds for iron deficiency in US pregnant women. Blood Adv. 8: 3745-3753, 2024