21 .性交痛を訴える性成熟期女性に器質的異常を認めない場合の対処法は?
ポイント
- 性交痛は人生に重大な影響を及ぼす病態であることを心得る.
- 性交痛は再発性腟感染症,避妊用ピル(OC),授乳,更年期,外陰部皮膚炎, 骨盤底機能障害,陰部神経痛,性的虐待や外傷,性感染症などから生じるこ とがある.
- どこが痛いかを同定して日常のケアを伝え,治療については性機能外来を紹介する.
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(1)性交痛
女性性機能障害は ICD-11 によると性交痛,性欲低下,オーガズム障害に分類されるが,性交痛は性欲低下やオーガズム障害の原因にもなる.日本で性交痛を生じる女性は約 20%と推計されている 1, 2)が,ほとんどの女性はそれを医療者には相談していない 3, 4).性交痛は当事者の性的健康のみならず,精神的,社会的健康を損ねる.痛みに挿入障害を伴う女性は挙児希望に関しても深く悩んでいることがあり人生の重要課題である.本人からの訴えがなくとも,診察時に内診困難な所見がある場合には性機能に関しても問診し,婦人科が性について相談できる場であることを示すとよい.
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(2)痛みについての診察
慢性的な性交痛の鑑別並びに所見は主に表15となる.いずれもクスコ診は要さない.
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1)問診
表15 の鑑別疾患を念頭に,発症時期(初めての性交からか,最近始まったことか)内服薬,増悪因子と寛解因子,痛みの程度と持続時間,触った時だけ or 触らなくても痛いか,などを問診する.
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2)治療,ケア 5)
表15 で鑑別される疾患の中には保険診療が可能なものもあるが,性交時痛の医療的ケアの多くは保険適用とならない.
自費診療に対応した性機能外来を紹介するが,一般外来では受診までの間の日常的ケアとして,下記を進めるとよい.- まず,患者の痛みの訴えが正当な医療対象であることを明確に伝える ・薬剤性前庭部炎を疑う場合はその中止について相談
- 前庭部の保湿と局所エストロゲン(エストリール腟錠)療法
- パートナーとの建設的な対話と,痛みが改善するまでは挿入を伴わない性交渉を推奨
- 挙児希望が強い場合に,内診指挿入が可能ならシリンジ法,クスコ診可能なら不妊症治療を紹介
- 骨盤底を緩めるエクササイズの紹介

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文献
- 1)Ohta H, et al. Online survey of genital and urinary symptoms among Japanese women aged between 40 and 90 years. Climacteric. 23(6): 603-607, 2020 PMID: 32720549
- 2)第4回ジェクス ジャパンセックスサーベイ 2020(https://www.jfpa.or.jp/pdf/sexservey2020/JexSexSurvey_all.pdf)
- 3)Ohta H, et al. An online survey on coping methods for genitourinary syndrome of menopause, including vulvovaginal atrophy, among Japanese women and their satisfaction levels. BMC Womens Health. 23: 282, 2023 PMID: 37226145
- 4)Hobbs LJ, et al. Help-Seeking for Sexual Difficulties and the Potential Role of Interactive Digital Interventions: Findings From the Third British National Survey of Sexual Attitudes and Lifestyles. J Sex Res. 56(7): 937-946, 2019 PMID: 30907691
- 5)Penteado SRL, et al. Individualized multidisciplinary therapy for vulvodynia. J Obstet Gynaecol Res. 50(2): 147-174, 2024 PMID: 37968775