26 .更年期障害の治療のためのホルモン補充療法をやめるタイミングは?

ポイント

  • HRT の継続を制限する一律の年齢や投与期間はない.
  • HRT 継続の必要性とリスク評価を患者と共有することが必要である.
  • 漸減法が中断法よりも推奨されるというエビデンスは乏しい.

    HRT をいつまで継続することが適正か,について明確に示した質の高い RCT は存在しない.各種ガイドラインや学会からのステートメントでは,2016 年に改訂された閉経や内分泌に関連した7つの国際学会による Global Consensus においては「治療期間は治療目的に応じて,毎年個別に評価する必要がある 1, 2)」とされている.また,2016 年に発表された国際閉経学会のステートメントでは「HRT の施行に一律の期間を決める理由はない 3)」,さらに 2015 年に発表された米国内分泌学会の Practice Guideline では「HRT の継続については,治療目的と個々のリスク評価を元にして,少なくとも1年に1度検討することを勧める 4)」としている.一方で,血栓症のリスク,子宮体癌のリスク,乳癌のリスクなどについて,個々の状況や,用いる製剤などを基にした評価が求められる.すなわち,HRT を行うことのベネフィットがリスクを上回る場合には,患者が継続を望んでおり,かつその起こり得るリスクについてインフォームド・コンセントが取れていれば,いつまでも継続は可能であるといえる. ただし,少なくとも1年に1度程度,あるいは来院ごとに,患者とその症例における HRT 継続の必要性とリスク評価を共有することが重要である.
    HRT を中止する際にとる方法として,即時に中断する方法(中断法)と HRT の投与量を徐々に減らしていく方法(漸減法)の2種類が考えられる.中断法と漸減法を比較した研究としては,4つの RCT が行われている.いずれも中断法と漸減法について更年期症状の再発頻度などを比較しているが,漸減の方法はそれぞれ異なっている.
    米国内分泌学会のガイドラインでは,HRT の中止について検討している女性に対しては,中断法か漸減法かについては,推奨レベル2(低いクオリティのエビデンス)として,個々の状況に応じて判断することを勧めている 4).また,英国の Menopause Full guideline でも,中断法と漸減法の比較では,どちらの方法も更年期症状の再発を改善するものでもなければ有害でもないため,その選択は患者の希望に基づいて行われるべきであると結論づけている 5).一方,米国 NAMS の position statement では, 中断法と漸減法を比較した報告が少ないことを踏まえた上で,専門家は一般的に漸減法を勧めていると記載している 6).したがって,HRT 中止の時期や方法に唯一の正解はなく,症状,再発リスク,合併症,患者の価値観を踏まえた共有意思決定(SDM)が最も重要である.

文献

  • 1)de Villiers TJ, et al. Revised Global Consensus Statement on Menopausal Hormone Therapy. Climacteric. 19(4): 313-315, 2016
  • 2)de Villiers TJ, et al. Revised global consensus statement on menopausal hormone therapy. Maturitas. 91: 153-155, 2016
  • 3)Baber RJ, et al. 2016 IMS Recommendations on women’s midlife health and menopause hormone therapy. Climacteric. 19(2): 109-150, 2016
  • 4)Stuenkel CA, et al. Treatment of Symptoms of the Menopause: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 100(11): 3975-4011, 2015 PMID: 26444994
  • 5)National Collaborating Centre for Women’s and Children’s Health(UK). London: National Institute for Health and Care Excellence(UK). Menopause: Full Guideline. 2015 PMID: 26598775
  • 6)“The 2022 Hormone Therapy Position Statement of The North American Menopause Society” Advisory Panel. The 2022 hormone therapy position statement of The North American Menopause Society. Menopause. 29: 767-794, 2022 PMID: 35797481