27 .関節痛が有意な更年期症状への対応は?

ポイント

  • HRT は関節痛発症を予防する可能性がある.
  • HRT で有意に改善しない関節痛の頻度は 15~25%で,変形性関節症,リウマチ性疾患,甲状腺機能異常,ビタミン D 欠乏など多因子が関与する.

    関節痛は,更年期女性において認められやすい症状の1つとして取り上げられてきたが,エストロゲン補充療法(HRT)後も遷延する場合があり,しばしば臨床上の課題となる.
    HRT で有意に改善しない関節痛の頻度は 15~25%で,変形性関節症,リウマチ性疾患,甲状腺機能異常,ビタミン D 欠乏など多因子が関与する.治療は①疾患特異的治療,②薬理学的疼痛緩和,③運動・リハビリ,④体重管理,⑤補完代替療法からなる多面的アプローチが推奨される.

  • (1)HRT による関節痛への効果

        関節痛は,従来のコホート研究では,明らかなエストロゲン低下・欠落症状との関連,エストロゲン投与が効果的であるかどうかの結論は出ていない 1).45~55 歳の 2,001 例のメルボルン在住の女性で健康状態などを聞き取り調査したコホート研究では,関節痛,関節の硬化症状の訴えは 51.7%と最も多く,かつ関節炎と診断されている女性は,閉経後では閉経前に比べて有意に多く,関節炎症状と関連のある因子として高年齢(OR:1.09[1.05-1.13]),高 BMI(1.04[1.02-1.07]),強いうつ状態(1.80[1.13-2.87]),性欲減退(1.58[1.26-1.97])とともに閉経(1.88[1.33-2.66])が指摘されている 2).医原性閉経でも関節炎の発症率には閉経前後で有意差が認められる 3).
        アロマターゼ阻害薬関連の関節痛リスクは,最終月経5年以内の女性で高く 4),エストロゲン低下・欠落症状と関節痛との関連はあるものと考えられる. 米国の民間保険登録者で変形性関節症(OA:osteoarthritis)と診断された手指,膝,股関節 OA の発症を調べた報告 5)では,いずれも 50 歳くらいで増加するが,この年代を境に最も増加するのは手指 OA であり,手指関節がエストロゲン低下の影響を受けやすい関節と考えられる.
        HRT による改善効果については,横断的研究として,53~54 歳のスウェーデン女性 1,760 例において性器萎縮以外の更年期症状の頻度を調べているが,閉経後において HRT の有無により,また同年代において月経の有無により,関節痛の頻度に有意差は認めていない 6).以上より,関節痛は閉経およびエストロゲン低下と関連する可能性はあるものの,HRT による明確な改善効果は症例間でばらつきが大きいと考えられる.

  • (2)HRT 無効症例へのアプローチ

        更年期女性の 40~60%が関節痛を自覚し,エストロゲン欠乏と炎症性サイトカイン増加の関与が示唆されている 7).しかし HRT 施行後も 15~25%で疼痛が残存する 8). HRT 無効症例に対する体系的方針は十分に確立されていない.エストロゲンは軟骨のコラーゲン合成促進,TNF-α抑制,痛覚閾値上昇に寄与する.HRT 無効症例では①局所炎症がエストロゲンのみで制御しきれない,②肥満・サルコペニアによる関節負荷,③ビタミン D 低下による骨軟骨脆弱化などが重畳する.
        薬理学的疼痛管理としては,NSAIDs やアセトアミノフェンの短期使用で,疼痛・可動域改善を行う.またセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI:デュロキセチン 40~60㎎/日)は,変形性膝関節症で推奨される.
        中枢神経系調節薬のプレガバリン,低用量トリアゾラムなど睡眠障害併存例に有効である.

    ホルモン関連薬の追加選択肢

    • ① Tibolone(2.5㎎/日)には,エストロゲン / アンドロゲン / プロゲスチン様活性があり,RCT で関節痛スコアが 35%減という報告がある(ただし日本での保険適用なし)
    • ② SERM(バゼドキシフェン,ラロキシフェンなど)には骨保護があり,疼痛が 10~15%減少する

        また,そのほか,非薬物療法として,運動療法が挙げられ,週 150 分の有酸素運動や関節周囲の筋力強化が症状軽減につながる.体重管理もまた有効と考えられ,BMI が1低下するにつき,膝 OA 進行リスクが9%減少する.心理社会的介入が有効である場合もあり,認知行動療法が疼痛・気分を同時改善するとされる.
        HRT 後も残存する関節痛は単一因子では説明困難であり,病態生理の再評価と多面的介入が不可欠である.具体的には①器質的疾患の除外,②薬理・非薬理療法の併用,③長期フォローアップにより QOL の最大化を図ることが望ましい.

文献

  • 1)Coope J. Hormonal and non‒hormonal interventions for menopausal symptoms. Maturitas. 23: 159-168, 1996 PMID: 8735354
  • 2)Szoeke CE, et al. Self‒reported arthritis and the menopause. Climacteric. 8: 49-55, 2005 PMID: 15804731
  • 3)Spector TD, et al. Frequency of osteoarthritis in hysterectomized women. J Rheumatol. 18: 1877-1883, 1991 PMID: 1795326
  • 4)Barnabei VM1, et al. Menopausal symptoms and treatment-related effects of estrogen and progestin in the Women’s Health Initiative. Obstet Gynecol. 105: 1063-1073, 2005 PMID: 15863546
  • 5)Chlebowski RT, et al. Estrogen alone and joint symptoms in the Women’s Health Initiative randomized trial. Menopause. 20: 600-608, 2013 PMID: 23511705
  • 6)Welton AJ, et al. Health related quality of life after combined hormone replacement therapy: randomized controlled trial. BMJ. 337: a1190, 2008 PMID: 18719013
  • 7)Pludowski P, et al. Vitamin D supplementation guidelines. Nutrients. 2018
  • 8)Yoshimura N, et al. Prevalence and characteristics of persistent joint pain after hormone therapy in Japanese women. 日本女性医学学会雑誌