28 .低用量エストロゲン療法でも改善しない閉経関連尿路性器症候群(GSM)の管理法は?

ポイント

  • 閉経関連尿路性器症候群(GSM)の症状を訴える女性に対し,初期対応として 感染・炎症,腫瘍性病変,骨盤臓器脱がないか確認する.皮膚腫瘍,硬化性苔癬, 小陰唇癒着症などを疑う場合には,皮膚科に紹介する.
  • 女性下部尿路症状(FLUTS:female lower urinary tract syndrome)が原因で腟・ 外陰部の不快症状が生じている場合は,残尿測定と尿検査を行い,FLUTS の 有無をみる.腟・腟前庭は排泄物,体液などによる刺激を受けやすい領域であり, 外陰部の清潔に関する衛生指導も重要である.
  • 腟・外陰部の不快症状を訴える女性に対し,局所に保湿剤(白色ワセリンなど), 潤滑ゼリー(リューブゼリー,KY ゼリーなど)を使用する対症療法が有効で ある.潤滑ゼリーはオイル,シリコン,ヒアルロン酸などがベースとなっており, 性交痛に対し適宜使用されるが,製品や使用状況によっては.かえって刺激・炎症を引き起こすことがあるため,症状をみながら適切に選択する.

    閉経関連尿路性器症候群(GSM)はエストロゲン低下に起因する腟・外陰部の乾燥, 灼熱感,性交痛,排尿症状を主体とする慢性疾患である.軽症では非ホルモン療法で 対応できることもあるが,中等症以上では,第一選択は腟錠・坐剤・リングなどの低 用量局所エストロゲン療法であり,約 70~90%の患者が改善すると報告されている 1)
    しかし,長期経過で約2~3割は症状が残存・再燃し,管理に難渋する 2).以下に 無効例へ推奨される段階的対応を概説する.

  • (1)局所ホルモン療法の最適化

    • ①投与形態を腟錠からエストロゲンクリームへ変更し,粘膜接触面積を拡大すること を検討する 3).日本で使用できるが,指定第2類医薬品であるバストミンⓇは OTC 薬品であり,保険は適用されない.
    • ②維持量を 0.5~1g/週へ増減,または投与を連日や隔日で調整する.血中 E2 は基準 値内に留まることが多く,一般的に全身性の安全性は高いとされる 3)
    • ③日本では採用されていないが,DHEA 腟剤(プラステロン 6.5㎎)はエストロゲン 受容体を介さずに腟上皮を肥厚させ,性交痛改善効果が証明されている 4).乳癌既 往でも使用可能である.保険は適用されない.
  • (2)全身ホルモン・SERM

    • ① GSM 単独では局所剤が優先されるが,経口ホルモン補充療法(HRT)は,血管運動 症状や骨粗鬆症を合併する場合に有用である.子宮摘出後例ではエストロゲンを 単剤で用いることができる 1)
    • ②選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であるオスペミフェンは腟上皮 にエストロゲン様作用を示し,性交痛を有意に改善する 5).乳房・子宮内膜刺激が 弱く,乳癌既往でも投与が検討されるが,日本では保険は適用されない.
  • (3)非ホルモン療法による補助

    • ①保湿剤(白色ワセリンなど),潤滑ゼリー(リューブゼリー,KY ゼリーなど)を使 用し,腟粘膜の乾燥を軽減し,結果として腟内環境の安定化(腟 pH の安定化)に寄 与する 2).
    • ②骨盤底理学療法として,腟ダイレーター,骨盤底筋訓練,バイオフィードバックに より性交痛と排尿症状を軽減する 6)
    • ③神経調節薬であるガバペンチンやデュロキセチンが,外陰部灼熱痛感に有効な例が ある 7)
    • ④性行動カウンセリングにより,性的回避による粘膜菲薄化の悪循環を断ち切る.
  • (4)外陰部症状への追加対策

        腟よりも外陰部の掻痒・灼熱が主体の場合,外陰部皮膚は角化が厚いので,局所エ ストロゲン単独療法では薬剤浸透が不十分である.

    • ①高力価ステロイド軟膏で,合併しやすい萎縮性苔癬や湿疹性病変を治療し,二次痛 を減少させる 8)
    • ②外用アンドロゲンとして 0.01~0.03%テストステロン軟膏を週3~7回塗布するこ とで外陰部感受性を改善した小規模報告がある 9)が,日本で使用できる第1類医薬 品であるグローミンは OTC 薬品であり,保険は適用されない.
    • ③局所ブピバカイン・カプサイシンは持続痛が強い場合に使用された例があるが,専 門医の管理下で行うことが望ましい 7)
  • (5)腟レーザー療法の位置づけ

        炭酸ガス(CO2)や YAG レーザーは,腟上皮の微小熱損傷によりコラーゲン再構築 を促すとされる.しかしランダム化比較試験は小規模かつ短期で,プラセボとの差が 統計学的に確認されていない 10).『産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編 2023』で は「十分なエビデンスが得られておらず推奨できない」と記されている 11).FDA も同様の声明を発出しており,現時点で臨床研究目的以外の routine 使用は控えるべき である.

  • (6)低用量局所ホルモン療法が無効な場合のフローチャート

    ①局所エストロゲン単独療法の最適化→② HRT 併用→③非ホルモン補助療法→④専 門医紹介(外陰部強い疼痛・皮膚疾患合併)という段階的介入が推奨される.

  • (7)まとめ

        GSM は慢性疾患であり,症状残存例では薬剤変更や用量調整に加え,多職種連携 による様々な視点からの療法を取り入れることが重要である.腟レーザーはエビデン ス不足のため日常診療では推奨されない.外陰部症状にはステロイドやエストロゲン 外用など代替策を用いて安全かつ持続的な緩和を図る.

参考文献

  • 1)NAMS Position Statement: The 2020 genitourinary syndrome of menopause. Menopause. 2020
  • 2)ACOG Practice Bulletin No. 141: Management of GSM. Obstet Gynecol. 2020
  • 3)Portman DJ, et al. Local estrogen therapy: safety and efficacy. Climacteric. 2019
  • 4)Labrie F, et al. Intravaginal prasterone improves dyspareunia. J Sex Med. 2018
  • 5)Simon JA, et al. Ospemifene for vulvovaginal atrophy. Menopause. 2019
  • 6)Kingsberg SA, et al. Multidisciplinary approach to GSM. J Womens Health. 2020
  • 7)Edwards L. Vulvar pain management. Dermatol Clin. 2020
  • 8)Chi CC, et al. Topical corticosteroids for lichen sclerosus. Cochrane Database. 2021
  • 9)Mitchell CM, et al. Topical testosterone for vulvar symptoms. J Low Genit Tract Dis. 2018
  • 10)Athanasiou S, et al. CO2 laser vs sham for GSM: RCT. Menopause. 2022
  • 11)日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会.産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編 2023