30 .LEP を使用している方の無症候性の D-dimer 上昇への対応は?

ポイント

  • 症状がない患者へのスクリーニング検査として D-dimer 測定は推奨されない.
  • 血栓を疑う症状について問診,診察を行う.

    D-dimer は血栓症に対して感度が高いが陽性的中率は高くないという特徴をもつ. 陰性であった場合は血栓の可能性は低いが,陽性であっても必ずしも血栓症を意味しない.血栓症の除外診断のためには有用である一方,LEP 内服者は非使用者よりも D-dimer が高値となり得るとされる 1).このため,スクリーニングとして測定すると, 不要な休薬や追加検査につながり,結果として説明・意思決定が複雑化する可能性がある.
    偶発的に D-dimer 高値を認めても,血栓症を早期に診断することは重要であり, ACHES(A:Abdominal pain(腹痛),C:Chest pain(胸痛),H:Headache(頭痛),E: Eye/speech problems(視覚・言語の問題),S:Severe leg pain(重度の脚の痛み))などの症状の有無を確認し,下肢の腫脹などの所見を確認する.深部静脈血栓症が疑われる症状があれば下肢静脈エコー,肺塞栓症の可能性があれば造影 CT を検討する. LEP 使用中に D-dimer 高値を認め,血栓症を疑う症状がない場合の対応については, 現時点で統一された見解は明確ではない.深部静脈血栓症や肺塞栓症の確率を示す方法として Wells score などが用いられるが 2),無症候性の LEP 使用者では適用しにくい場合が多い.無症候例に一律に画像検査を推奨する根拠は乏しいが,不安が強い場合などには共有意思決定の一環として画像評価を検討することが,患者の納得につながる可能性がある.D-dimer は炎症でも上昇し得るため 3),外傷,感染症,激しい運動など一過性の上昇要因の有無を確認する.そのほか自己免疫疾患や糖尿病などに伴う慢性炎症,肝疾患,がんなどでも高値となり得る.LEP 使用自体が D-dimer 高値に寄与している可能性もあり,状況によっては一時的な休薬を選択肢として検討する. ただし,頻回の中断・再開は再開時に血栓症リスクが増加する可能性が指摘されており,安易には行わない.
    血栓症を除外した上で,LEP を慎重に継続するか,代替治療へ変更するかを含め, 患者の価値観と不安の程度を踏まえて個別に判断する.

参考文献

  • 1)Tekle E. et al. Hematological Profile Changes Among Oral Contraceptive Users: A Narrative Review. J Blood Med. 13: 525-536, 2022
  • 2)日本産科婦人科学会,日本女性医学学会編.OC・LEP ガイドライン 2020 年度版.2020
  • 3)Franchini M. et al. How we manage a high D-dimer. Haematologica. 109(4): 1035-1045, 2024