36 .排卵検査薬の正しい使用法について聞かれたら
ポイント
- 排卵検査薬は尿中 LH サージの定性検査である.
- 排卵は次回月経開始予定日の約 14 日前に起こると仮定し,その3日前から検査を開始する.
- 測定は同じ時間に行い,1日2回行う.
- 検査前に多量の水分を摂らないこと,判定時間を守ることが重要である.
- 排卵検査薬で尿中 LH サージが検出された日が性交の推奨日である.
- 妊娠可能期間中に行う性交回数は3~5回で妊娠率が高い.
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(1)排卵検査薬の基礎知識
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1)月経周期と排卵
性成熟期の正常な月経周期は 24~38 日であり,排卵後には主に黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌され,エストラジオール(E2)も一定量分泌される.妊娠が成立しない場合,排卵後約 14 日で黄体が退縮し,ホルモン低下に伴って子宮内膜が剝離し月経が始まる.
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2)排卵のメカニズム
排卵は視床下部-下垂体-卵巣系におけるエストラジオールの負・正のフィードバックにより誘導される.キスペプチンニューロンがゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)を制御し,卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)の分泌を促す.E2 による positive feedback により LH サージが起こり,サージ開始から約 34 時間後に排卵が起こる.
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3)LH サージの定義と開始
LH は排卵直前に急上昇(LH サージ)する.卵胞期早期(周期 3~5 日)における血中 LH は 2~9mIU/mL(平均 5.3±1.7mIU/mL)である.LH サージの開始濃度は報告により差があり,10~20mIU/mL が目安とされるが,17 または 20mIU/mL とする報告も多い. また,ベースライン値の 1.8~2.0 倍を開始と定義する場合もある.
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4)LH サージのパターン
LH サージは急激な立ち上がりで始まり,約 14 時間(12~16 時間)でピークに達する. その後ピークは 12 時間持続し,24 時間以内に急速にベースラインに戻る.LH サージ全体の持続時間は 36~48 時間であり,開始から排卵までは平均 34 時間,ピークからは平均 20 時間とされる.
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(2)排卵検査薬の使用方法
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1)血中 LH と尿中 LH の時間差
尿中 LH の上昇は血中 LH より 4~12 時間遅れる.これは腎での代謝による影響とされるが,不妊治療におけるタイミング指導に大きな影響はない.
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2)排卵検査薬の原理と感度
排卵検査薬は尿中 LH を抗 LH 抗体で検出する免疫クロマトグラフィー法に基づく. カットオフ値は製品により異なり,20~40mIU/mL である.市販品は陽性・陰性の判定のみ可能だが,医療用体外診断薬では定量的な濃度判定も可能である.
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3)排卵検査薬の検査開始時期
予定月経開始日を0日とすると排卵日が-14 日と想定されるため,その3日前(-17 日)から検査を開始する.周期が不規則な場合は最短周期に合わせて計算する.不規則周期(23 日以下,39 日以上)の場合,排卵障害の可能性も考慮され,検査の信頼性が低下する可能性がある.検査開始が遅れると排卵後の LH 上昇を捉える可能性があり,検査の有効性が低下する.
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4)陽性判定の注意点
多くの市販薬では,テストラインとコントロールラインの両方が陽性になった場合に LH サージ陽性と判定される.添付文書の指示に従い,検査前に多量の水分を摂らないこと,判定時間を守ることが重要である.また,検査は毎日同じ時刻に行い,1日2回行うことで LH サージの早期検出が可能となる.
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(3)妊娠可能期間とタイミング法
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1)月経周期における妊娠可能性
自然周期において排卵日(-14 日)の5日前(-19 日)までは妊娠が可能(8~36%)であるが,排卵翌日以降では妊娠率は極めて低下する.すなわち,妊娠可能期間は排卵日含めた6日間である.より妊娠しやすい時期は,排卵日(妊娠率 36%)を含む排卵日から2日前(-15 日で妊娠率 34%,-16 日で妊娠率 36%)までである 1).
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2)性交回数と妊娠率
妊娠可能期間中に行う性交回数は 3~5 回で妊娠率が高い(3回 37.5%,4回 46.6%, 5回 33.3%)1).また,禁欲期間が短い(1日)方が妊娠率は高く,4日以上では低下する傾向がある.
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3)排卵検査薬と性交のタイミング
排卵検査薬で LH サージが検出された日が性交の推奨日である.サージ開始から約 34 時間以内に排卵が起こるため,陽性反応日当日の性交が妥当とされる.ただし,サージのピークから排卵までが約 20 時間である点を踏まえ,検査薬がサージのどの時点を捉えているかを考慮し,タイミング指導を行う必要がある.
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文献
- 1)Wilcox AJ, et al. Timing of sexual intercourse in relation to ovulation. Effects on the probability of conception, survival of the pregnancy, and sex of the baby. N Engl J Med. 333: 1517-1521, 1995