40 .性別適合手術を行っていないトランスジェンダー男性へのがん検診は?
ポイント
- 乳房や子宮が残存していれば,シスジェンダー女性と同様の乳がん・子宮頸がん検診を行う.
- 受診しやすいように,医療環境の改善や職員研修を行う.
- アンドロゲン療法による子宮頸がん,子宮体がん,乳がんの発症率への影響は疫学的に確定していない.
- トランスジェンダー男性(表22)では,アンドロゲン療法,乳房切除術,性別適合手術(子宮・卵巣切除術)の有無により種々の状態がある.乳房や子宮が残存していれば,シスジェンダー女性(表22)と同様に乳がん・子宮頸がん検診を行う必要がある.性交経験例もあり,HPV 検査の併用も有用である.
- 身体への思い,過去の医療者との不快な経験などから受診率は低く,結果として発見時には進行例が多いとされる.受診環境の改善や職員研修が求められる.
- アンドロゲン療法による子宮頸がん,子宮体がん,乳がんの発症率への影響は疫学的に確定していない.アンドロゲン投与により子宮頸部上皮は委縮し,細胞診で「不適正」 判定となる割合が上昇するとされる.94 例の摘出子宮の内膜を検討した報告では,約 25%は萎縮,約 65%は増殖期様変化を示し,悪性所見は認められなかったとされている. 一方,112 例の検討では8例に異型のない子宮内膜増殖症が,1例に腺がんが認められたとの報告もある.進行がん例,リンチ症候群合併例の報告もある.遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の症例では,性別不合としての治療過程を待たずに,予防的乳腺・ 卵巣摘出を考慮する.

文献
- 1)Panichella JC, et al. Cancer screening and management in the transgender population: Review of literature and special considerations for gender affirmation surgery. World J Clin Oncol. 14(7): 265-284, 2023 doi: 10.5306/wjco.v14.i7.265. PMID: 37583948
- 2)Sterling J, Garcia MM. Cancer screening in the transgender population: a review of current guidelines, best practices, and a proposed care model. Transl Androl Urol. 9(6): 2771-2785, 2020 doi: 10.21037/tau-20-954. PMID: 33457249