(1)性感染症,HPV と妊娠
(1)性感染症,HPV と妊娠
ポイント
- 性感染症は不妊や流早産,母子感染などを引き起こす可能性がある.
- 20代女性や20~50代男性において梅毒が増加しており,先天梅毒の発生数も急増している.
- 子宮頸がんの治療は妊孕性の喪失につながる.
- 若年者の子宮頸がんが増加しており,HPVワクチンや子宮頸がん検診での予防が求められる.
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1)性感染症
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①性感染症と妊娠
- 性行為によって感染する病気が性感染症であり,特にクラミジアや淋菌などは感染力が強い.
- 性感染症は不妊,流早産や母子感染による胎児の障害などを引き起こすリスクがあり,パートナーも含め,速やかに適切な治療を行う必要がある.
- 妊娠の希望あるいは可能性のあるカップルは妊娠前に性感染症に罹患していない,あるいは完治していることを確認しておくことが望ましく,妊娠中も感染予防に努める必要がある.
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②梅毒
- 梅毒が流行しており(図16-1),本邦でも20代女性・20~50代男性で急増している.
- 梅毒に罹患した母体から胎盤を介して胎児にも感染することがあり,出生時は無症状のことが多いが,生後3カ月以内に水疱性発疹などの皮膚症状,全身性リンパ節腫脹,肝脾腫などの早期先天梅毒や,生後2年以降に実質性角膜炎,内耳性難聴,ハッチンソン歯(ハッチンソン3徴候)といった晩期先天梅毒を引き起こすことがある.
- 本邦においても先天梅毒が急増しており(図16-2),リスクの高い性行為を避けるなどの予防が求められる.
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2)性行為によって感染するHPV関連疾患
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①子宮頸がんと妊娠
- 本邦において若年者の子宮頸がんは増加しており,女性の晩婚化・晩産化と相まって,大きな問題となっている.
- 子宮頸がんの標準的治療は子宮全摘あるいは放射線療法(同時化学・放射線療法を含む)であり,妊孕性の喪失につながる.前がん病変に対する治療である円錐切除術によっても,その後の妊娠での早産リスクが上昇する.
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②HPVワクチンによる予防
- HPVワクチンによる子宮頸がんの予防効果が海外で示され1),本邦でも前がん病変の予防効果は広く示されている2).
- HPVワクチン接種後の多様な症状が問題となったが,安全性が確認され,現在は積極的勧奨も再開されている.
- 積極的勧奨差し控えに接した生まれ年度に対するキャッチアップ接種も実施され,接種率は徐々に回復している(表9).
- HPVワクチンと子宮頸がん検診の普及により,子宮頸がん対策の実効性を高める必要がある.


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文献
- 1)Lei J, et al. N Engl J Med. 383: 1340-1348, 2020
- 2)Ikeda S, et al. Cancer Sci. 116(1): 226-232, 2025