(1)魚介類の適正摂取について
ポイント
- 魚介類には良質なタンパク質,多価不飽和脂肪酸,微量栄養素などが含まれる.
- 魚介類にはメチル水銀などの環境化学物質も含まれるが,様々な栄養素と化学物質を総合的に見た時,魚介類摂取はすべてのライフステージを通じて健康に有益である.
- 厚生労働省からは,特にメチル水銀の含有量の多い魚介類の摂食について注意事項が示されている.
- 妊娠中は水銀含有量が少ない魚種に置き換えながらバランスの良い食事を摂ることが重要である.
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1)魚介類に含まれる栄養素と化学物質(図4)
- 魚介類は良質なタンパク質,オメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸(EPA,DHA),ビタミンA,ビタミンD,ビタミンB12,ヨウ素,鉄,セレン,亜鉛など,重要な栄養素を含む.
- 魚介類には,メチル水銀やダイオキシン類,ポリ塩化ビフェニルなどの環境化学物質も含まれるため,これらが魚介類の栄養素のメリットを弱める可能性について指摘されている.
- 世界保健機関と国際連合食糧農業機関によれば,魚介類に含まれる様々な栄養素と化学物質を総合的に見た時,魚介類摂取はすべてのライフステージ(妊娠中,小児期,成人期)を通じて「有益」であり,強いエビデンスがある1).

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2)魚介類摂取のメリット
- 魚介類摂取は冠動脈疾患,脳卒中,炎症性疾患,がん(大腸がんなど)のリスクを低減させる1).
- 妊娠中と幼少期の魚介類摂取は,子どもの神経発達に有益である1).
- 妊娠中の魚介類摂取には,低出生体重や早産に対して予防効果がある1).
- 魚介類摂取と妊孕性の関連については一貫した研究結果は得られていないが2),妊娠を考える前から魚介類摂取の食習慣を獲得することは,生涯にわたる自身と家族の健康にとって有益と考えられる.
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3)魚介類摂取のリスク(メチル水銀について)
- 自然現象や人間の産業活動から排出された水銀は自然界を循環し,水中に入った無機水銀は,海水中でバクテリアによりメチル化され,メチル水銀になる.メチル水銀は,世界中いたるところで海産物や淡水魚の中に存在しており,食物連鎖による生物濃縮で主に大型海洋動物に蓄積する3).
- 妊娠中の母親の魚介類摂取は,児の神経発達を改善する一方,母親のメチル水銀曝露は児の神経発達に悪影響を与える可能性がある4).厚生労働省からは,特にメチル水銀の含有量の多い魚介類の摂食について注意事項(表2)が示されている.
- 魚種によって水銀含有量は大きく異なるため(表3),水銀含有量が少ない魚種に置き換えながらバランスのよい食事を摂ることで魚介類摂取の利点を最大化できると考えられる.


参考文献
- 1)Afonso C, et al. Joint FAO/WHO Expert Consultation on the Risks and Benefits of Fish Consumption: Meeting report, Rome, 9-13 October 2023, 2024
- 2)Alesi S, et al. Assessing the influence of preconception diet on female fertility: a systematic scoping review of observational studies. Hum Reprod Update. 29: 811-828, 2023 doi:10.1093/humupd/dmad018.
- 3)環境省 水俣病情報センター.水俣病と水銀について(http://nimd.env.go.jp/archives/minamata_disease_in_depth/esearch_on_mercury/)
- 4)Suzuki K, et al. Neurobehavioral effects of prenatal exposure to methylmercury and PCBs, and seafood intake: neonatal behavioral assessment scale results of Tohoku study of child development. Environ Res. 110: 699-704, 2010 doi:10.1016/j.envres.2010.07.001.
- 5)厚生労働省.魚介類に含まれる水銀の調査結果(まとめ)(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/050812-1-05.pdf)