(2)家族を持つための様々な選択肢

(2)家族を持つための様々な選択肢

ポイント

  • 家族を持つために,様々な選択肢があることを知り,当事者たちに寄り添う.
  • 提供配偶子など第三者の関与する治療の可能性について,最新の状況を把握する.
  • 特別養子制度など関連する法的・社会的整備状況について,常に注視する.

    家族を持つ方法として,まず思い浮かぶ「妊娠・出産」は,誰でもすぐに実現できるというわけではない.10組のカップルのうち,1~2組は妊娠するために不妊治療を必要とし,体外受精などの生殖医療によっても妊娠・出産に至らない場合がしばしばある.また,早発閉経や子宮のない女性,さらに同性カップルや選択的非婚女性は,家族を持つための特別な支援を要する.臨床家は,個々の女性について,年齢を含む様々な状況を深慮し,支援可能性とその方法を助言・提案するために知識と十分な情報収集力を備える必要がある.

  • 1)提供配偶子を用いる治療

    • ①方法

          第三者から提供された精子を用いる人工授精(AID:Artificial Insemination with Donor’s Semen)(わが国以外ではDI:Donor Insemination)に加え,提供精子,提供卵子を用いるIVFやICSIがある.

    • ②現況

          わが国には2025年4月現在,生殖医療を規制する法令は存在しない.AIDは,日本産科婦人科学会の会告「提供精子を用いた人工授精に関する見解・考え方」により規制され,利用者を法的婚姻夫婦に限定し,匿名提供者からの精子のみを用い得る.提供卵子を用いる治療について規制は何も存在しないが,臨床利用は一部の施設に限定され施行数は極めて少ない.
          2025年2月に提供配偶子を用いる治療を規制する「特定生殖補助医療法案」が国会に提出され審議された.この法案には,治療は法律婚夫婦のみを対象とすること,生まれた子の「出自を知る権利」が十分に保障されないこと,罰則を伴うことなど問題点が多々あり,結局廃案となったが,今後の予断を許さない.

    • ③今後の可能性

          もしこの「特定生殖補助医療法案」が成立すると,従来から行われてきた法的婚姻関係にない利用者による日本産科婦人科学会の会告規定以外の枠組みによる提供精子利用が,罰則導入によりアンダーグラウンド化する.また,2021年に施行された「民法特例法」の附則に記載された「出自を知る権利」の実現は,不十分なまま維持されることが懸念される.

  • 2)養子縁組による家族形成

    • ①方法

          1987年の民法改正で創設された,実親との親子関係を解消し,養親と新たな親子関係を結ぶ特別養子縁組制度がある.この制度では現在,子どもの福祉の増進を図るため,15歳未満の子を対象として,一定の要件を満たす者が家庭裁判所の決定により養親となることが可能である.

    • ②現況

          わが国では,先進諸国と比較し養子関連法令の整備が遅れていたが,民間あっせん団体の問題などを契機に,2018年に関連法が施行され,制度がようやく整備された.特別養子に関連して,都道府県知事などが様々な許認可権限などを持つ.法律上,養親に上限年齢の記載はないが,運用上,親子の年齢差を40歳程度に制限する自治体があり,また養親年齢を50歳未満とする事業者もある.実施の主体となる児童相談所の関与のあり方には地域差が大きく,現実には民間事業者や産婦人科医が主に重要な役割を果す地域もある.一方,特別養子制度に対する行政による財政支援が十分ではない状況は,今日まで不変である.最近では,代理懐胎により出生した子との特別養子縁組,また性別変更した母との特別養子縁組も認められている.

    • ③今後の可能性

          もし特別養子縁組制度への財政支援が拡充されれば,制度そのものの認知や特別養子当事者と家族への理解がさらに促進されることが期待できる.

文献

  1. 倫理に関する見解一覧 (https://www.jsog.or.jp/medical/576/)
  2. 生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律(https://laws.e-gov.go.jp/law/502AC0100000076/20211211_000000000000000)
  3. 民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律(https://laws.e-gov.go.jp/law/428AC0100000110/20190401_000000000000000?tab=compare)