(2)産後うつ病とてんかん

1)産後うつ病

ポイント

  • 産後はうつ状態になりやすいことを説明し,予防について情報提供する.
  • 産後うつ病の発症リスクが高い人に対しては,サポート体制を準備しておくことを提案する.
  • ①産後はうつ状態になりやすいことを説明する

    • 周産期は身体的,心理的,社会的に大きな変化が生じる時期である.
    • ストレスとなる出来事,脳機能の変化,サポートの不足など複数の要因が重なり合って産後女性の10人に1~2人がうつ状態になる.
    • 気分の落ち込み,興味や関心の低下,喜びの喪失,著しい不安,イライラなどがみられやすい.
  • ②予防について情報提供する

    • うつ状態の予防として,休息や睡眠時間を確保する,日光を浴びる,適度な運動やリラクゼーションを行う,人とつながり助けを得られるようにしておくことが望ましい.
    • 産後にサポートがない状況下でこれらの予防を行うことが困難であるため,保健師などによる訪問1),産後ケア事業などによるサポートが受けられることを伝えておく.
  • ③ 産後うつ病の発症リスクが高い人に対しては,サポート体制を準備しておくことを提案する

    • うつ病の既往,予期せぬ妊娠,暴力を受けた経験,月経前症候群がある女性は産後うつ病の発症リスクが高いとされている2,3)
    • 産後うつ病の発症予防,早期発見,対応のために,計画的な妊娠を行い,パートナーや家族の協力を得ること,協力がない場合は社会資源の利用を検討すること,精神科や保健師と連携できるようサポート体制を準備しておくことを提案する.

参考文献

  • 1)Dennis CL, et al. Psychosocial and psychological interventions for preventing postpartum depression. Cochrane Database Syst Rev. 2: CD001134, 2013 doi:10.1002/14651858.CD001134.pub3.
  • 2)Tambelli R, et al. Psychiatric Risk Factors for Postpartum Depression: A Systematic Review. Behav Sci (Basel). 15: 173, 2025 doi:10.3390/bs15020173.
  • 3)Gastaldon C, et al. Risk factors of postpartum depression and depressive symptoms: umbrella review of current evidence from systematic reviews and meta-analyses of observational studies. Br J Psychiatry. 221: 591-602, 2022

2 )てんかん

ポイント

  • 妊娠,出産について,てんかん診療医と相談することを提案する.
  • 妊娠中に抗てんかん薬を服用するリスクとベネフィットについて理解を得る.
  • パートナー,家族などの協力を得て生活環境を整えることを提案する.
  • ①妊娠・出産について,てんかん診療医と相談することを提案する

    • てんかんのタイプ,重症度,服用している抗てんかん薬の種類により妊娠中のリスクは異なるため,てんかん診療医による評価が必要である.
    • 妊娠中に転倒を伴う発作で外傷を負うと,切迫流産や常位胎盤早期剝離を来すおそれがある.
    • また,強直間代発作が生じた場合には,胎児に低酸素脳症を来す危険性がある.
  • ②計画的な妊娠

    • 妊娠前から葉酸0.4㎎/日程度をサプリメントなどで補充しておく.
    • 妊娠6カ月前までには薬剤調整を終えて、転倒する発作や強直間代発作がみられない(薬物療法により発作が抑制されている)状態で妊娠を計画することが望ましい.
  • ③妊娠中に抗てんかん薬を服用するリスクとベネフィットについて理解を得る

    • 一部の抗てんかん薬は妊娠中の服用により児の先天異常発生率の上昇や神経発達への影響が報告されているため,妊娠中は中止,減量し,リスクの少ない他剤への変更を行う必要がある.
    • 妊娠中に抗てんかん薬を服用することにより転倒を伴う発作や強直間代発作が抑制され,母体の外傷や産科合併症,児の合併症を防ぐというベネフィットもある.
    • 薬物療法のリスクとベネフィットについて正しく理解し,自己中断や服薬アドヒアランスの低下が生じないようする.
  • ④パートナーや家族などの協力を得て,生活環境を整えることを提案する

    • 育児や家事による疲労や睡眠不足は、てんかん発作を誘発することがある.
    • 乳児を抱いている時や沐浴中にてんかん発作が生じると,重大な事故につながる可能性がある.
    • パートナーや家族の協力を得て育児や家事を分担できる体制をあらかじめ整えておくことが望ましい.