会長挨拶

沖縄県産婦人科医会が日本母性保護医協会（昭和24年設立）の沖縄県支部として発足したのは17年後の昭和41年であります。その当時沖縄県は米軍の施政下にあり本土との連携が困難な時期でありました。このような状況を打開するにあたり、熊本大学医学部産科婦人科学教授　加来道隆先生と日本母性保護医協会会長　森山豊先生の多大なるご尽力により支部が発足したと記録されております。初代支部長は川平昌晄先生、第2代支部長赤嶺正次先生、第3代支部長上村昭栄先生、第4代支部長糸数健先生、第5代支部長高良光雄先生で、現在6代目となっております。2011年より本部の改組に伴い日本産婦人科医会沖縄県支部は沖縄県産婦人科医会として現在会員数150名で活動しております。

沖縄県産婦人科医会は沖縄産科婦人科学会と共同でいわゆる車の両輪として沖縄県の産婦人科医療の推進に当たっております。産婦人科医の大きな目的は女性の生涯にわたる心身の健康に寄与することです。医会はこの観点に立ち会員の生涯学習への支援を沖縄産科婦人科学会と協働して行い、産婦人科医療の質の向上に努め女性の生涯にわたる健康保持・増進に取り組んでおります。
　支部発足当時の事業として子宮がん対策のための子宮がん検診を真っ先に取り組まれました。赤嶺正次先生の昭和51年の日母医報に寄せられた報告を参考にしますと、当時大学病院はなく、公立病院や一般産婦人科診療施設も十分でない状況下で集団検診を行い、細胞診、病理診断は米軍陸軍病院の専門医の協力のもと推進したとのことであります。その結果10年後には進行がんの患者が減少したと記されております。この医会主催による集団検診を長年行っておりましたが、各市町村のがん検診事業の推進より多くの受診者が施設検診を受けている現状から医会としては子宮頸がんの啓蒙活動のため公開市民講座を5年前より開催し子宮頸がんの特性、検診の重要性、予防などを特に若い世代への周知に力を注いでおります。
　
沖縄県は全国で最も高い出生率の県です。その中で周産期医療の充実のため県主催の周産期保険医療協議会において医会はその計画立案や評価、事業推進に積極的に取り組んでおります。沖縄県産婦人科医会は出産を希望する女性に対する妊婦健診や産後健診の公費負担制度の拡充を行政、県医師会、関連団体と連携して推進しております。乳幼児虐待や妊産婦の心のケアへのメンタルヘルスにも取り組んでいます。新生児の聴覚検査の推進も取り組んでいるところです。周産期医療の推進にあたって第4代支部長糸数健先生は乳幼児死亡率、新生児死亡率の改善ため南部地区周産期ネットワ－ク協議会（現沖縄県周産期ネットワ－ク協議会）を平成8年に設立し未熟児受け入れの空床情報を那覇市医師会で集計、地域産科診療所からの搬送をスム－ズに行うシステムを構築されました。このシステム導入が沖縄県の死亡率の改善に大きく寄与しており厚労省、日本医師会から高い評価を受けています。また総合周産期センタ－、地域周産期センタ－と産科一次施設との連携を深めるために周産期症例検討会を行い安全・安心な医療に心がけております。産科医療の安全を確保するためには産科一次医療施設の救急救命対応能力をより高める必要があるとの観点から、産科医師ならびにコメディカルを対象とした母体救命講習普及事業を沖縄産科婦人科学会の主催で行っています。また、日本産婦人科医会のもとで妊産婦死亡例を登録・分析し、また死亡に至らない例も偶発事例として集積する事業を行っています。
　
母体保護法の適正な運用に当たっては県医師会のもとで行われる指定医師のための法の理念、生命倫理、医療安全の講習会に医会は積極的に関わっております。離島県の特殊性を考慮してビデオによる離島医師会での講習会開催を行い、すべての会員の先生方への周知を図っております。
　
日母おぎゃ-献金事業に沖縄県は当初から積極的に推進しております。沖縄県には「ぬちどう宝」（命こそ宝）という故事があり、その心に沿って多くの妊産婦、産婦人科医院・病院がこの献金事業に参加されております。献金基金から沖縄県の身体障害施設の療育環境整備に贈呈されております。

以上沖縄県産婦人科医会の活動の一部をご紹介いたしました。我々は沖縄県民の皆さんの健康増進に貢献すべく歩んでいく所存です。今後とも医会活動へのご理解、ご支援、ご鞭撻をよろしくお願いいたします。

令和元年　5月3日
沖縄県産婦人科医会 会長

佐久本 哲郎